おい、戦友(とも)よ。
最近どうだ? 肩は凝るし、膝は笑うし、若い頃みたいに無理もきかねぇ。
世の中は相変わらずクソみてぇなことばっかりで、酒でも飲まなきゃやってらんねぇよな。
そんな、酸いも甘いも噛み分けた、いや、どっちかっていうと酸っぱい思いばっかりしてきた俺たちに、神様が遣わしてくれたバンドがいる。
そいつらの名前は「ザ・ピーズ」。
ダメで、ぐうたらで、どうしようもねぇけど、最高に愛すべきロックンロールバンドだ。
「バカになったのに」…ならなかった俺たちの代弁者
ザ・ピーズは、1987年に大木温之、通称「はる」を中心に結成されたバンドだ。
世の中が浮かれたバンドブームだった頃、奴らは「バカになったのに」と歌った。
結局、世渡り上手にバカにもなりきれず、かといって真面目に生きるのも性に合わねぇ。
そんな宙ぶらりんな俺たちの気持ちを、奴らはとっくの昔に歌にしてくれてたんだ。
はるが紡ぎ出す歌詞は、まるで俺たちの心のボヤキそのものだ。
「全部あとまわし」とか「とりあえずここはいい気持ち」なんて、聞いているだけで「だよな!」って膝を打ちたくなる。
難しい言葉なんか一つも使わねぇ。なのに、どうしようもなく胸に突き刺さる。
それを、飾り気のないゴツゴツした3ピースのロックンロールに乗せて叩きつけるんだから、たまんねぇよな。
止まったり、動いたり、また止まったり
そんなザ・ピーズだから、その活動も一筋縄じゃいかねぇ。
人気絶頂だったはずの1997年に「一旦活動を終了」。
おいおいマジかよ、と思ったファンも多かったはずだ。
だが5年後の2002年、ドラムにthe pillowsの佐藤シンイチロウを迎えて何食わぬ顔で活動を再開した。
このマイペースさ、まさにピーズだろ?
そして極めつけは、結成30周年にあたる2017年6月9日、なんと初の日本武道館公演を成功させちまったんだ。
いつもライブハウスの隅っこで、酒飲みながら見ていたあのダメ人間たちが、武道館のど真ん中に立ってる。
あの光景は、涙なしには見られなかったぜ。
歳食った今だからこそ、心に沁みるんだ
若い頃はよ、もっとギラギラした、反骨精神剥き出しのロックに夢中になったもんさ。
だがな、歳を重ねて守るもんも増えて、色んなことを諦めちまった今の心には、ザ・ピーズの歌がとんでもなく沁みるんだ。
奴らは「頑張れ」なんて野暮なことは言わねぇ。
「生きてれば」「ノロマが走って行く」…そうやって、ダメなまんまの俺たちを、ただただ肯定してくれる。
それは、どんな応援歌よりも優しい、最高のロックンロールだ。
はるが食道がんを乗り越えたり、メンバーが変わったりしながらも、奴らは今もステージに立ち続けている。
もし、お前さんがまだザ・ピーズの音楽に触れたことがねぇなら、まずは「生きのばし」でも聴いてみてくれ。
きっと、長年溜め込んできた心の澱が、少しだけ軽くなるはずだ。
じゃあな、またどこかのライブハウスで、酒でも酌み交わそうぜ。



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